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出版:柏書房
著者:ハリークリフ
訳者:熊谷玲美
出版年月日:2023年1月
サイズ:四六判
ページ数:472ページ
ISBN:9784760154975
配送方法:スマートレター
取扱店舗:SANJOPUBLISHING他
<内容紹介>
本書は、かつてカール・セーガンがいった「アップルパイをゼロから作りたかったら、まず宇宙を発明しなければなりません」の発言に沿って話が進む。そうであれば、実際にそのアップルパイの究極のレシピを見つけるには、いくつかの大きな疑問に答えなければならない。たとえば物質は本当は何からできているのか? 物質はビッグバンのものすごい熱さの中でどうやって消滅を免れたのか? そして、宇宙の最初の瞬間を理解することは可能だろうか? 本書はそうした疑問から書かれている。たとえば物質とは何でできているのか。この本の流れに沿うなら、アップルパイはリンゴと小麦粉と砂糖と・・・となる。しかしその1つひとつはさらに何からできているのだろうか。小さなものが見えなかった時代、見る方法が生まれつつある時代、そして現代まで、人々は物質が何からできているのかをどう考え、どのようにそれを見いだす方法論を構築し、見誤ったり、勘違いしたりの繰り返しから、事実を見つけてきたのか。その変遷をたどりながら、TEDトーク(Have We Reached the End of Physics?)で250万回視聴された著者(CERNのLHCで研究に携わる)が素粒子とはどのようなものかを語る。
著者、自らが子どものころに行ったアップルパイの分析実験から始まり、元素とは何かについて古代ギリシャの考え方を紹介し、18世紀のラヴォアジエが化学元素(当時は物質の構成要素は物理学ではなく化学の扱う分野だった)の概念を生み出したことを説明する。その当時は古代ギリシャの元素である土、水、空気、火からなる四元素(と熱さ、冷たさ、乾き、潤いという四つの質の概念があった)という考え方が主流であり、それぞれがお互いに変化するものという認識だった。つまり水(冷たく湿っている)に熱を加えれば空気(熱く湿っている)になるというような相互変換である。これは18世紀になるまで引き継がれており、この考えを否定するところから新しい化学は始まることになった。具体的には水から土への変換はしないというようなことである(それまでは水を煮詰めると黒いものが残り、これが土であるという認識)。それからフロギストロン(火をつけると発生すると思われていたもの)の話、水素に酸素を加えて水になる話(これでギリシャ時代の水から土は否定される)などと展開していく。あとの章では元素は分子ではなく原子であることを証明していくアインシュタイン、さらに小さな原子核や電子の発見、その振る舞い、もっと分解して陽子、素粒子とどんどん小さくなっていく。こうして物質が何からできているのか、今わかっていること、わからないことをつまびらかに述べる。こうした話を身近な話題に関連して取りあげつつ、これらの発見を誰がして、当初どのように受け入れられ、あるいは無視されながら事実に近づきつつ証明されてきたのか、その経緯を歴史的に、その前後の人々の認識を絡めて段階的(年代的にも物質の大きさ的にも)に語る形式を取っている。
弦理論の問題点とは? 自然の基本法則を完全に理解できるのか? スファレロンとは何か? ヒッグス粒子どうやって見つかったか? ヒッグス場とは何か? 反物質はどうやって作るのか? 超対称性とは何か? などこの分野の最新の成果を盛り込みつつ、素粒子物理学というとっつきにくい内容を、身近な物質とその成分の発見の歴史をとおして、肉眼世界からミクロの世界へと、最新の研究成果をわかりやすく語っていく。ちなみに素粒子物理学は宇宙の基本的物質の探求(ニュートリノの反粒子の研究など、ノーベル賞の小柴さんや梶田さんが関連する研究)や、その終わりにかかわるダークマターやダークエネルギーなどの最新の宇宙研究にもつながっていることがわかる。
<著者>
ハリー・クリフ(Harry Cliff)
ケンブリッジ大学を中心に活動する素粒子物理学者。ロンドンのサイエンス・ミュージアムで7年間にわたってキュレーターを務めた。定期的に市民向け講演を行い、テレビやラジオにも出演している。2015年に行われたTEDトーク「Have We Reached the End of Physics?(私たちは物理学の終焉を迎えたのか)」は250万回以上視聴されている。ロンドン在住。
熊谷玲美(くまがい・れみ)
翻訳家。東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻修士課程修了。訳書にエリック・アスフォーグ『地球に月が2つあったころ』(柏書房)、エマ・チャップマン『ファーストスター』(河出書房新社)、デイビッド・バリー『動物たちのナビゲーションの謎を解く』(インターシフト)、アリ・S・カーン他『疾病捜査官』(みすず書房)、サラ・パーカック『宇宙考古学の冒険』(光文社)など多数。
レビュー
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