OUT OF SIGHT!!! Vol.3「地域と芸術祭、あの前後」
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__芸術祭が与えるローカリティ__
カルチャーメディア、「ANTENNA・PORTLA」編集部が発行するインディペンデントカルチャーマガジン 『OUT OF SIGHT!!!』の第三号は「芸術祭」
地域性、あるいは土地柄、その土地の風俗・習慣・人情などは芸術祭によってどのように変化してきたのかを問いを立てながら本号は制作されました。
書籍情報
出版:Troublemakers
発行:ANTENNA・PORTLA編集部
サイズ: 雑誌/ A5
ページ数:96ページ
配送方法:レターパック
内容紹介
隣人の顔を思い浮かべる時、その輪郭は案外とボヤケている
台湾に移住して、一年と少しが経過した。毎週、異国で過ごしている日々をメールマガジンとして記録していたので撮りためた写真がたくさんある。見返していると「まだ一年か」とも、「もう一年か」とも、どちらの気持ちも湧いてくる。
日本の地方都市に生まれ、中流家庭で育ってきた自分は往々にしてマジョリティとして過ごす時間が長かっただろう。そうした意識もろくにせぬまま成長してきていたわけだが、移住することでそうではない側にも属することになった。それらをはじめに感じたのが社会的インフラへの接続の困難さで、初歩的なことから言えばゴミの捨て方もわからないのである。
台北はもちろん近代的な都市なので、飯を食い、必要最低限な日用品を得るのに困ることはない。しかし、それはどこまでいっても「他者との関わりを必須としない都市の生活レベルの話」に限るのであって、誰かの関係性に一歩でも踏み込むのであればまず言葉の壁は大きく立ちはだかる。さらに言えば、ビザがなければ携帯のキャリアを契約することもできないし、引っ越しをすればすぐに政府に新しい住処を知らせなければいけない。これまで当たり前に享受していた自らの生活が誰かの許しを得なければ成立しないという事実を突きつけられ、「疎外感」は一層その分厚さを増した。
こんな調子で「地域の一員になれないもどかしさ」を感じた時、自分がこれまでに描いてきた線と、その周縁にあったものがなんであったのかを考えてみたくなる。「こうした環境に身を置かなければ、できなかったのか」と思えば落ち込む部分がないわけではないが、事実そうであったのだから受け止めざるを得ない。今も昔もさまざまなリアリティを引き受けてきた市井の人々と、広がりを魅せる芸術祭が包括するものに目を向けながら。
OUT OF SIGHT!!! 編集長
堤大樹
(版元より)
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